有人潜水調査船「しんかい6500」をめぐる記事で、朝日新聞はネットの指摘を受けて記事を訂正してお詫びした。記事は8月11日に朝日新聞デジタルに、12日に朝日新聞朝刊に掲載されたが、朝日新聞デジタルの記事は8月13日に更新されて有識者の一部コメントが削除され「おわび」が掲載され、8月14日付けの朝日新聞朝刊にも「訂正して、おわびします」が掲載された。
朝日新聞デジタルは「しんかい6500」に関する記事を8月11日に掲載した。これは深海探査を担っている海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船「しんかい6500」の「寿命」が迫っていることを伝えたもので、後継の探査機について文部科学省が有人ではなく無人機の開発を行う方針であることを報じたもの。記事は8月12日付け朝刊にも掲載された。
当初の記事では国立科学博物館の谷健一郎研究主幹の発言として「現状でもまずい状態。早期の老朽化対策が必要だが、延命治療しても使えるのかというのが現場が感じている危機感だ」と記していた。朝日新聞デジタルが簡易投稿サイトXに投稿したこの記事のツイートに対して、ユーザーが背景情報を追記する機能であるコミュニティノートに「記事内容が文科省の議事録と矛盾する」などの指摘があり、さらに谷健一郎研究主幹も自身のXアカウントに「私は朝日から一切取材を受けていません。そして(これが重要ですが)、私はしんかい6500の延命に関して疑問を呈したことはありません。延命して使い続けるべき、と考えています」と投稿した。
これを受けて朝日新聞は、記事に掲載した谷氏の発言について、記者が谷氏に直接取材をしたものではなく文科省の有識者会議での発言であったことを明らかにするとともに、発言は「しんかい6500」についてではなく、その支援母船である「よこすか」に関してのものであったと明らかにして記事の訂正とお詫びを掲載した。当初の記事では、老朽化する「しんかい6500」に対する現場の危機感を伝えるコメントとして谷氏の発言が記載されていた。
有識者会議での谷氏発言を「しんかい6500」に関する発言と誤認していたばかりか、記事に都合のいいように切り取って、あたかも記者の取材に対する発言であるかのように報道していたのであるから、単なる勘違いでは済まされない朝日新聞記者の報道姿勢そのものが問われる案件だと言えるだろう。政府や大手メディアはネットの虚偽情報を盛んに注意喚起しているが、ネットが大手メディアの虚偽を正すメディアとして機能していることを示したといえる。
■出典
https://www.asahi.com/articles/ASS8733T3S87ULBH00QM.html?iref=pc_tech_science_science_list_n